俺はあの時、何を求めていたのか


     それが分からなくて、彷徨っていた


     感情が渦巻いて、自分の気持ちが分からなくて



     何故だかすごく 気持ちが悪かった









       ― 望んだモノ ―









     眠れなかった。

     昼間にサボって寝てしまったのも原因だとは思う

     でも、それより


     夢で、昔のことを 見たから・・・



     その後見つかって、溜まった仕事をやらされて、


     寝ようとした、ら・・・



     昼間の夢のことを思い出した。


     昔の・・・真撰組になる少し前のことを・・・・・・


     後はもう、眠ろうとしても眠れなかった。

     眠ろうとすると、後から後から考えが、思いが湧き出てきて

     苦しかった。気持ちが悪かった。

     もう、自分が何で此処にいるのかも、分からなくなるくらい・・

     そんな自分が、嫌だった。

     とにかくそこから、逃げ出したかった――・・









     ただひたすら、走ってきた。

     屯所の、自室から逃げるように。


     気がついたら、川原にいた。


     ずっと走っていたから、疲れてその場に座り込んだ。

     水面に外灯や星の光が映って、何となく周りが見える程度の明るさ。

     目の前を流れる水の音。

     そんな状況が、今の自分の心を落ち着かせるには丁度良かった。




     じゃりっ

     「!?」


     「沖田くん・・・・?」



     急に現れた人物。

     その顔は暗くてよく見えない、が・・・声に聞き覚えがある。



     「・・・・・・・万屋の、旦那?」


     「おー、やっぱり沖田くんじゃん」


     「・・・何で旦那が此処に?」


     「いやぁ、コンビニに行こうと思ったら、走ってる沖田くんを見つけたからさー。
      何となく気になって。追っかけてきたのよ。」


     「へー・・・(ストーカー?)」


     「で、そっちは?何で此処に?」


     「・・・・・・眠れなかったんで、外の空気を吸いに来ただけでさァ」


     「じゃあ何であんなに急いで走ってたの?」

     「・・・・・・・・・。」



     嫌なところを聞いてくる。

     眠れなかったのは本当だし、外の空気を吸いに来たのも、嘘というわけではない。

     だが、走っていた理由は、答えることが出来ない。


     自分でもよく分からないのだから・・・・・・




     「ま、言いたくないなら良いけど、さー」


     「・・・・・・・・・旦那は、 」


     「ん?」



     「旦那は・・・・・・

      初めて人を殺した時・・・どう、感じたんですかィ ?」


     「!・・・・・・どう、って」



     「恐かった?辛かった?苦しかった?嫌だった?
      ・・・それとも、楽しかったですかィ?人を、斬り殺すことが」



     「・・・それは、沖田くん自身のこと?」

      「!!!」


     「違う?」


     「それは・・・・・・当たり、でさァ」





     初めて人を斬ったとき、すごく恐かった。

     自分が自分で無いような気がして、恐ろしかった。

     人を斬ったときの感触が、手から離れなかった。


     でも、それでも、

     どこかで楽しんでる自分が居て。

     人を斬ることを、笑って、楽しんで


     そんな自分が一番、恐くて嫌いだった・・・。




     「・・・・・・旦那は、俺を軽蔑しやすかィ・・・?」


     「・・・さあ、なァ・・・・・・」


     「・・・・・・・・・」

     「でも、」

     「・・・?」


     「俺には軽蔑をする資格も権利も、無い。・・・とは、思うけど。」


     「え・・・・・・」



     「俺だって、昔は沢山殺してきた。人だったり、天人だったり・・・。
      色々な呼ばれ方もされた。全部が嫌だったと言い切れる自信もねえ」

     「旦那が・・・?」


     「ああ。でも、人には表があれば裏もあるわけで。
      ・・・どんな奴だって、陰の部分はあるだろうよ」


     「その陰を受け入れるかどうか・・・それが、違いなんじゃないの?」


     「陰を・・・・・・受け入れる・・・・・・・・・?それって、どういう・・?」


     「沖田くんはさ、もうできてんじゃないの?」


     「・・・・・・?」


     「人を殺すのが嫌だったことも、恐かったことも・・・楽しく感じてしまったことも。
      全部、自分で解ってるんでしょ?それは、受け入れてるってことなんじゃないの?」


     「そう・・ですかねィ?」


     「そうそう。・・・何々、それでも不満〜?」

     「え、や・・・不満って言うか・・・・・・」


     「まあ、さ。とりあえず、自分の陰の部分を認めてるんだし。
      受け入れていなくっても、十分なことなんじゃないの?
      それだけで、人は変われるモンだと思うけど」


     「じゃあ、旦那もですかィ?」

     「へ?」

     「旦那も、変われたんですかィ?」


     「まあ・・・変われた・・・んじゃねえのかなァ」


     「・・・そうですかィ」




     自分が、本当に変われるかなんて、分からない。

     でも、受け入れるのは、出来るかもしれない。

     少なくともこの人は、こんな俺を認めてくれたから。

     人殺しの俺を、突き放したり、辺に気を使ったりせずに。

     全てをちゃんと、聞いていてくれた。

     俺を知っても、態度を変えないでいてくれた。

     それだけで、俺は・・・・・・


     望んでいたのかも、しれない。

     『沖田総悟』を、全部見てくれて、

     全てを、受け止めてくれて・・・


     ・・・・・・俺を、救ってくれる人を・・・・・・・・・。



     「で、今日の悩みは解決できた?」


     笑顔で、変わらない態度で。


     「まあまあ・・・でさァ」


     救ってくれた、こんな人を。


     「そーかい。そりゃあ良かった。
      まぁ、また悩むことがあったらウチに来たら?これでも万屋なんでね」


     「マジですかィ。じゃあまた頼みまさァ。依頼料はパフェで。」

     「ヲイ。」

     「ケーキも付けまさァ」

     「よし乗ったァ!」




     ああ、なんてちょろい。


     でも、食べながら相談も、良いかもしれない。


     それにしても・・・



     「・・・まさか人に相談事をする日が来るとは・・・ねィ」


     「んん?何か言った?」


     「そろそろ帰ろうかなぁ、と言ったんでさァ」



     「ん・・・ああ!コンビニにアイス買いに来たんだったァ!!」


     「・・・それぐらい、奢りまさァ。今日の相談料ってことで。」


     「マジで!?いよっしゃあァ!!」


     「じゃ、行きやしょうか。」








      きっとまた、俺の中の陰の部分は出てくるけど。

      今なら、抑えられるかもしれない。

      受け止めたい。自分自身を。

      変わるために。




     でも、もしも・・・

     もしも、抑えることが出来なかったら・・・


     きっと陰は 暴れ続けて―――





     
――自身を、破壊していく――






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   えーっと・・・多分、続きます。
   初連載ってことで。
   ていうか、訳わからなくてスイマセン。眠いもので。
   その時の感情にまかせて書いてたんで・・・・・・。

   ・・・コレって、沖田視点?なの?
   そして銀さんの口調がわからない!!