計画を立てるために、説明書を読もうか。
このゲームの、そしてゲーム対戦者の。
情報収集をすることを決めてたら、予鈴が鳴った。
そろそろ戻るか。
授業を受けるつもりはないので教室ではなく、応接室に。
そこで寝ていれば、放課後になれば敵の方からやってくるだろう。
そう思って、応接室に戻ってすぐソファで寝た。
・・・別にいつも寝てるわけじゃなく、昨日は偶々眠かっただけだ。
「・・・ん・・・・・・・・・・・・」
「あ、ヒバリ、起きたか?」
・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・っ!?
「、君・・・ッ!?」
何で此処に!?
え、何、気付かなかった!?僕が?
「やー、びっくりしたぜ?来たらヒバリ寝てんだもんな」
「・・・・・、起こせばよかったのに」
・・・迂闊にも程がある。
敵に寝顔みられるなんて。
「や、起こすのとか可哀相かなーって。それに、ヒバリの寝顔可愛かったし!」
「・・・・・・・ああそう」
よくもまあそんな事言えるよね、とか思ったけど。まあいいや。
そうだよ、コイツは普段は猫被ってるだけで、本性出せば音を立てないくらい出来るんだろう。
ああもう、馬鹿だ自分。
そんなヤツが来ることを知っていたはずなのに、寝てたなんて。
「しっかし、珍しいのな!ヒバリが起きないなんて」
ほら、しっかりと分かってて聞いてくる。
君が欲しい答えも予想がつくよ。何となくだけどね。
「別に。疲れてただけだよ」
「えー、俺だから起きなかった、とかじゃなくて?」
「ありえないね」
ほら、やっぱり。
気を許してる、とか気が有る、とか。
そういう答えを期待してるんでしょう?
ここまではまだ、予想通り。
でもここからは、
自分で行動してみることにしたんだ。
だってこれはゲームなんだから。
「ねえ」
「ん?」
「君って一応、野球部のエースなんだよね」
「一応じゃなくてもエースだって」
「モテるんじゃないの?」
「へっ?」
あ、珍しく本当に驚いている顔。
・・・面白い。
「んー、まあ、それなりに?」
「何で彼女作らないの?」
「・・ヒバリィ、俺お前のこと好きだって言ってんじゃん!」
あ、いつもの笑顔に戻った。
ついこの前まで騙されてた、この笑顔。
・・・・・本当、ムカツクよね。
「告白されてたでしょ、今日」
「っ!」
ほんの一瞬だけ。
いつも山本に甲高い歓声を送っているような女子が見ても分からないぐらい、ほんの一瞬。
山本は固まった。笑顔も一緒に。
でも僕は、気付かないフリをしてあげるよ。
つまらないからね、そうじゃないと。
「昼休みの終わりごろ、女子が話してるのが聞こえたよ。『山本君にふられた〜・・・』ってね」
「、ああ!そーいうことな」
何も無かったように振舞おうとしているみたいだけどね。
安心が顔に滲み出てるんだよ。気付いてる?
なんて、言ってあげないけど。
「で、なんで断ったの?」
「だからぁ・・・」
「もっとマシな答えを出しなよ」
「マシ・・・・って?」
「興味ないとか面倒とかったるいとか」
「・・・それ、ヒバリのことだろ」
「まあね」
でも、君自身にも言えることじゃないの?
「山本 武」
「ん?どした?」
嘘の笑顔を浮かべながら、フルネームで呼ぶなんて珍しー、とか言っている君にね、
言ってみたくなったんだ。
笑顔で、
「大嫌いだよ」
って。
普段殆ど笑わないのに、わざわざ笑顔で。
だって君の反応が気になったんだ。
「・・・え、コレいじめ?」
「そうかもね」
言葉を出す前、山本の目には確かにあった。
イラつきや、怒りと呼ばれる気持ちが。
「・・・ヒバリ、日曜ヒマ?」
「なんで」
「一緒にどっか行こうぜ?」
「何で嫌いなやつと出かけなきゃいけないの」
「や、嫌われてるからこそ、好きになってもらうために・・・な?」
この間までよりも、確実に行動に出てきてる。
山本も、僕も。
山本はきっと楽しんでいるんだろう。
どうやって僕を落として
どうやって僕を堕とすかを。
だったら僕も、
君を屈辱の色で染め上げてみせようか。
「いいよ」
「え?」
「日曜。行ってもいいよ」
「マジで!?」
「つまらなかったら咬み殺すから」
「おー!まかせとけって!」
君の情報を手に入れるために、丁度いいからね。
観察して、可能なら弱みを見つけ出す。
「楽しみだな、日曜!」
「そうだね」
僕も山本も、偽りの笑顔でゲームをしてる。
まだ、大丈夫。
まだ山本は気付いていない。
このゲームのことに。
ちょっとだけ、次のステージに進んでみる。
(実はこのゲームってレベル高いよね?)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
黒くならないなー・・・。
でも次ぐらいから山本視点で書くかもしれないから、その時に黒く・・・なったらいいなぁ。
07.12.17
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