毎日毎日、応接室にやってくる人物がいる。
     部活のこととか友達のこととか、些細なことを聴いてもいないのに勝手に喋り続けてた。
     何度殴ったりしても懲りずに話しかけてきた。
     いつも笑ってて、天然で、馬鹿なやつ。
     いつの間にか、惹かれていたのかもしれない・・・・・・・・。





     「よ、ヒバリ!」

     「また来たの、君」

     「ヒバリに会いにな!」

     「僕は会いたくないんだけど」


     冷てー、とか言いつつも笑っているやつ、山本。
     最近毎日応接室にやってくる人物。
     最初こそ殴ったり蹴ったりして拒んでいたけど、それでも懲りずにやってくるから諦めて何も言わなくなった。
     何で毎日来るのかと聞いても、笑って誤魔化す変なやつ。
     どうでもいい話を一方的に話して帰ってく。


     「ヒバリー?」

     「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

     「おーい?俺の話聞いてる?」

     「聞いてない」

     「ああうん、聞いてるのな」


     ・・・聞いてないって言ってるのに。
     でもそんなこと気にせずに、山本はまたどうでもいいことを話し出す。
     それが毎日一回はあること。
     それが、今日は少し違った。



     「ヒバリー」

     「・・・・・・・・・・・・・」

     「おーい?」

     「・・・・・・今度は何」



     「俺、ヒバリのことが好きだよ」

     「・・・・・・・は?」



     好き?好きって、なにが?
     どういう意味で?
     Love?Like?
     (不本意だけど)友達とか、そういう意味で、だよね?


     「ヒバリのこと、愛してる」

     「・・・ねぇ君、大丈夫?」

     「ハハ、俺これでも一応本気で言ってんだけど」

     「頭どっかで打ったんじゃないの」

     「ひでー」


     愛?Loveってこと?
     何で?ていうか男同士で?馬鹿じゃないの。
     意味分からないんだけど、。


     「じゃ、俺帰るから」

     「・・・・・・あっそ」


     「ヒバリ、好きだからな」



     パタンッと扉が音を立てて、山本は応接室から出て行った。
     いつも通りの笑顔で、好きだと言って。

     好き?
     ・・・何ソレ。

     僕にどうしろっていうのさ。


     でも、

     「何で・・・?」



     嫌だとは思わなかった。


     「男同士なのに・・・」


     僕はもしかしたら、山本に気を許してしまっていたのかもしれない。
     気付かないうちに、惹かれていたのかもしれない。








     イライラする。
     きっと、ていうか絶対、山本が変なことを言い残していったせいだ。
     好きとか、愛してるとか、変なことを・・・。


     「・・・群れ、咬み殺しにいこう」


     それが一番のストレス解消法だと思うから。
     どうせ放課後なら校舎裏に行けば誰かしら群れているだろう。



     ほら、予想通り。
     校舎裏に近づけばだんだんと数人の男の声がしてくる。
     男なら、ちょうどいい。
     女だと色々面倒なときがあるから。(それでも手加減はしないけど)



     「ところでさ、山本ー」

     「んー?」


     !!!!
     山本!?
     ついさっきまで応接室に来ていた、山本?
     きっと、本人だろう。声からして。
     何で、こんなところに?
     ・・・・・まあ、いいや。
     イライラの原因を咬み殺せる。
     そう思って、僕は群れのところへ踏み出そうとした。

     けど、踏み留まってしまった。

     だって、


     「お前、マジでヒバリのこと好きなの?」


     そんな会話が聞こえてきたから。



     「んぁ?なんで?」

     「だって最近毎日行ってんだろ、応接室?」

     「まあ」

     「で、どーなんだよ?マジ?」



     山本は、何て答えるんだろう・・・・?




     「まさか、マジなわけないじゃん」




     ・・・え・・・・・・・・・・・・?
     何それ・・・・・・。

     視界が、色褪せた気がした。



     「男同士だぜ?ありえねーよ。ただの遊びだよ」

     「だよなー。まさかあのヒバリにマジになるわけねーよなー」


     「ヒバリなら簡単に落ちないだろうし?楽しめそうじゃん」

     「じゃ、ヒバリがお前に落ちたらアイス奢ってやるよ」

     「やりっ」



     気付いたら、咬み殺さずに僕はそこから逃げだしてた。
     やっと思考がまともに働き出したのは、応接室に戻ってからだった。


     ああ、そういうこと。


     やっぱり、本気なんかじゃないんだ。

     少しでも真に受けた自分こそ馬鹿だったんだ。

     そうだよ、男同士で恋愛なんて・・・。
     自分がそんなことするはず、ないじゃないか。



     僕は、騙されそうになっていたんだ。




     ムカツク。

     悲しい気持ちなんかなくって、ただ、ムカツク。
     騙そうとした山本が、じゃなくて、
     あんなやつに騙されそうになっていた、自分が。





     「そうだ」


     だったら、ゲームをすればいいんだ。
     自分と、山本で。



     僕が山本に落ちてしまったら、山本の勝ち。

     でも、山本が諦めたり、(ありえないだろうけど)僕に惚れたりしたら、僕の勝ちだ。


     山本が勝ったら、さっきの声の主にアイスでもなんでも奢ってもらえばいい。


     でも、僕が勝ったら、



     「おもいっきり、咬み殺してやろう」





     
さあ、ゲームの始まりだ。

     
(絶対に、落ちないから)






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   とあるサイトの黒い山本に触発されました!
   黒本・・・・いい!まだあんまり黒くないけど。

   07.12.15