向けられた銃口

それを自分に向けている人物


黒い人


髪も瞳も服も黒くてでもその肌は対照的に白い



何よりも愛しい、愛しい愛しい、



「・・・ヒバリ」


愛しい黒い人








   + 銃口 +









裏切ったのは、俺だった。
理由は何だっただろうか、あまり明確には覚えていない。

・・・今の日々が嫌だったのかもしれない。


昔は毎日遅くまで遊んでばっかで、宿題とか勉強なんて全然しなくて、馬鹿な悪戯やって怒られて
野球を好きになって中学で野球部に入って毎日部活で一生懸命で、でも楽しくて笑ってて

『将来は野球選手になりてーな』なんて、ただ漠然と思ってて。






どこから俺は変わった?








ツナ達のことは大好きだ。だって友達だから。
だからツナ達と一緒に行く道を選んだ。選んだのは俺だ。

でも俺は、
あの日常が本当は、       大切だったんだ。

ただみんなで笑いあっていたその時間が。
楽しかったんだ。だから笑ってた。
毎日、笑って・・・・。


じゃあ、今は?
笑って・・・?
笑ってる。顔にはいつだって笑顔が浮かんで、でも、
その笑顔は本物なのか?
笑顔に本物とか偽者とかあるのかなんて知らないけど。
本気で笑っていたのか俺は?



人、殺して。


笑ってた?




俺は、大切な人が死んだら泣く。
たとえそれが人間をたくさん殺してる、マフィアだったとしても。

じゃあ、俺が殺した人は?

きっと誰かが悲しんでて泣いているはずなのに。
泣いてくれる人がどこかにいるはず、いるかもしれないのに。
でも俺が殺した。
俺は大切な人が死んだら悲しくて泣く。もしかしたら復讐を考えるかもしれない。
なのに、
俺だって人を殺してる。






もう何もかもが分からなかった。
嫌になった。


だから、かもしれない。



ツナを、ボンゴレを、


ヒバリを裏切ったのは。



















「わかってるよね?君なら」


目の前には、銃口。
向けられてるのは俺。向けてるのはヒバリ。



「『裏切り者には死を』、だろ?」


ヒバリの顔が歪んだ。



「っ、何で、」


泣きそうに見えるのは気のせいかもしれない、と思うのがきっと気のせいなんだろう。
(まあつまりは、泣きそうな顔ってこと)




「・・・裏切ったこと?」

「ッ・・・・・そうだ」


ああ、もっと泣きそうな目になった。
そうしてるのが自分っていうのがなんとも辛いような嬉しいような悲しいような。




「何で、か・・・」


まあ話すと長くなるんだけど最後まで聞いてくれる?
なんて長ったらしい世間話を始めるわけにはいかないから、とりあえず黙っておく。
・・・世間話かこれ?まあいっか。

あ、睨んでる。そうだよな何か言わなきゃだよな。





「飽きたから?」

「ッ!」



「マフィアとかボンゴレとか、全部飽きたんだよ」



「・・・それだけの理由で、裏切ったの?」


「ああ」



ゴメンなヒバリ、嘘付いて。
でも本当の理由はお前には知られたくないんだよ。
だってほら、こんな臆病な俺なんて・・・。



「・・・そう」


ヒバリが少し角度が下がっていた銃口を再び俺に、俺の頭に向ける。
ああ、そっか。お別れなんだよな。

ああ、ホントはもっとずっとヒバリと一緒にいたかったな。
でもそのために人を殺すなんて耐えられねーんだ、俺って臆病者だから。


ごめんな、こんな別れ方になって。









「ねえ、知ってた?」


「・・・何を?」


なんだ、急に










「君って、嘘が下手なんだよ」





「・・・ぇ、?」


え?
まさか、





「まあいいよ。・・・君の下手な嘘に騙されてあげる」


まさか、まさかまさかまさか
ヒバリは、
俺の理由、

気づいて・・・・・・













「ばいばい」












パンッと銃独特の音がした。


でも俺に痛みは無かった。




見えたのは、

スローモーションで倒れていくヒバリの姿






「ひ、ばり?」


なんで


なんでなんで、どうして、なぁ、

「なんでヒバリが死ぬんだよぉ!!!」



馬鹿な理由でお前を裏切ったのは俺なのに、どうして、どうして?


「僕、・・・に、」

「、ヒバリ!?」





「ぼくに・・・きみ、を、撃て・・なんてむ、りにッ・・・き・・ま・・・・・・・」


「ひばり?なあ、ひば、り・・・?」




ヒバリが、動かなくなった。



    俺は大切な人が死んだら悲しくて泣く。もしかしたら復讐を考えるかもしれない。


目から涙が止まらなかった。


「復讐・・・って、」


誰に?
だってヒバリは・・・・ひばりは・・・・
・・・ああ、そっか


「俺、か」












銃の音がまた一つ、辺りに響いた。














+++++++++++++++++++++++++++
 ・・・長っ!!
 随分前に涼永サマから頂いたお題「銃口」です。
 山本鬱でごめん。中途半端でマジごめん。



 080816