「そのまま呼吸を止めてしまいたかった」






     「キスで死ねたら素敵じゃない?」
     「・・・突然ですね。ずいぶんとロマンチックだ」

     本当に突然な彼の発言。
     今は二人とも雑誌から目を離さずに、適当に会話をしてただけのはずだった。


     「死にたいのですか?」
     「まさか。どうして僕が死ななきゃいけないの」
     「ですが、素敵だと。」
     「そう思わない?キスで殺されるなんて・・・」

     クスクスと笑いながら雑誌をめくる彼。
     普段からだが、今日はもっとわかりにくい思考をしているようだ。
     もっとも、僕も彼を理解しようとはしていないが。

     「ねぇ、どうなの」
     「あ、・・・えぇ。相手によっては幸せですね。
      でも、僕は殺されるより殺すほうがいいです」
     「どうして?」
     「だって、愛しい人の最後までも自分のものにできるじゃないですか」

     そう言った僕の答えが満足のいくものだったのか、
     彼は雑誌をめくる手を止めて僕に歩み寄る。
     笑顔で。


     「ねぇ、ならいいよ。僕を殺させてあげる」
     「クフフ・・・キスで、ですか?」
     「そう、キスで。とっても深いの。思考ごとキミのものにしたらいい」
     「・・・そこに愛はあるんですか?」
     「あるよ。とびっきりの愛。全部ぜんぶ、キミのもの。
      ・・・そしてキミは、僕のものになるんだ」


     「・・・恭弥、キスしていいですか?」
     「フフ、まだ殺さないでね?」

     いたずらに、そして儚げに笑うキミ。
     全部もらえる。キミの、全部を。
     そう考えていたらキスしたくなって、たぶんそれはキミを愛してるから。


     唇に軽く触れて、すぐ離れる。
     見つめ合って、また触れる。
     今度は舌を入れて、絡めあう。

     「んっ・・・んーっ・・・」
     「・・・っ、はぁっ・・・・」

     苦しくなったのか引っ込もうとする彼の舌を、逃がすまいときつく捉える。
     吸い上げ、歯列を裏側から味わうように舌を這わし、ぐちゃぐちゃに口内を犯す。
     含みきれない唾液が彼の顎を伝い、床に落ちた。
     さすがに苦しいのか、胸を強く押されたので仕方なしに離れると、
     二人の間に銀の糸が伝い、すぐに切れた。


     「・・・はぁっ、はっ、・・・ちょっと、殺す気?」
     「いえ、まさか。まだ死ねないんでしょう?」
     「・・・でも、深すぎ。死ぬかと思った」
     「冗談を。まだまだいけますよ」
     「・・・はぁ・・・」

     顎に伝った唾液を舐め取りながら抱きしめる。
     あぁ、このすべてが、僕のものになる。

     「何、物欲しそうな顔して」
     「・・・なんでもないですよ」
     「・・・まだあげない。たっぷり焦らしてあげる」
     「おやおや・・・厳しいですね」

     それでも、いつかは。


     「ねぇ恭弥、勝手に死んだら怒りますよ。」
     「ねぇ骸、僕より先に死んだら怒るから。」






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   鶫サマからの、頂き物という皮を被った強奪品その3!!
   や、実際はもっと沢山奪ってますがね!
   鶫サマ、素敵なムクヒバごちそうさま!有難うございます!!