「ヒーバーリー!!」
ああ、うるさいのが来た。
毎日来られたせいで慣れたけどね。
「何、山本」
「海行こうぜ、海!!」
前言撤回。ていうか追加。
こいつ、山本武の存在には慣れたけど、突拍子もない言動と行動には慣れない。
・・・慣れたくもないけど。
・・・で。
「本当に来ちゃうんだよね」
「あはははは!」
しかも結構無理矢理にね。
まさか車で拉致られるとは・・・流石に予想外だったよ。
「親父、車で待ってるってさ」
「あっそ。・・・ていうか、何で海?」
今何月だか分かってる?10月半ばだよ?
「そりゃもちろん、海ってか砂浜でヒバリと、
『あはは〜待てよ〜』『ふふ、早くこっちまでおいでよ〜』・・・みたいな追いかけっこがやりたかったから」
「却下。」
何で僕がそんなことをしなきゃいけないんだよ。
大体、男二人でそんなことしても痛いだけだよ。
「まあ、それは冗談で」
何だ、冗談か。
山本のことだから本気で言ってるのかと思った。
「ヒバリが水に滴ってるとこを見たかっただけなんだけどさ」
「やめてくれないかな」
実は君って変態だよね。
何処ぞのパイナポーほどじゃないけどさ。
「と、いうわけで・・・」
ゾクリ、と背中の辺りが寒く・・・悪寒?がした。
何かすごく、嫌な予感・・・・・・・。
「行ってこーい!!」
ドンッと、海に向かって背中を思いっきり・・・押された。
え、ちょっと、いきなり何するの!?倒れるから・・・!
「うわ・・・ッ」
「え、ちょ、うお・・・・・・ッ」
人間の反射神経ってすごいよね。
・・・という感じに、倒れそうになった僕は、まぁ・・・・とっさに掴んだんだ。山本を。
そしたら二人一緒に倒れるわけで。
バッシャーン・・・ッ
と、盛大な音がして、僕らは二人して海に突っ込んだ。
もちろん頭から爪先まで、びしょ濡れ。
「うはっ、しょっぱぁっっ!!」
「っ・・・ごほ、ゲホッ」
冷たいし塩辛いし、最悪。
「ヒバリー、いきなり引っ張るなよなー」
「元はと言えば、君がいきなり押したせいでしょ」
それはそれだろー、とか言ってる山本。
本当にムカつくなコイツ。
とりあえず、いつまでも海に座り込んでいても冷たいだけだから、ゆっくりと立ち上がる。
水を吸った服が、重い。
「二人ともびしょ濡れだなー」
「君のせいでね」
「あはは、それほどでも?」
「褒めてないから」
ポジティブというか能天気というか。(いや、ポジティブは少し違うか。)
何で僕は今、こんなヤツと一緒にいるんだろうと、少し考えこんでしまう。
でも、山本が勝手について来るのだから、しょうがない。
何言ってもついてくるし・・・。僕はもう何したって無駄・・・。
「まあでも、ヒバリの濡れ姿は見れたし、ラッキー!!」
・・・・・いや、咬み殺してしまえばいいんじゃないだろうか。
咬み殺しても、うん、いい気がする。
滴る海水と君の姿を。
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題名に特に意味はなし。
07.11.15