いつの間にか自分の近くに来て、
     いつの間にか自分の中に入ってきたヤツ。

     勿論、最初は来るたびに殴った。
     殴って殴って殴っても、毎日来たヤツ。
     どうして痛い思いをしてまで、僕に関わるのかが分からない。
     最近じゃ呆れて何も言わないけど。



     でも、それでも。


     どうして近くにいることを許してしまったのだろう。







     「雲雀さん!」


     ほら、また来た。
     勝手に、なのに簡単に僕の中に入ってくる、アイツ。



     「また来たの?沢田綱吉」

     「やだなあ、綱吉って呼んでって言ったじゃないですか」



     勝手に応接室に入ってきて、勝手に寛いで。
     色々と話しかけてくるけど、僕は一言二言しか返さない。


     なのに、ねぇ、

     なんで此処に来るの?




     「雲雀さん、どうかしたんですか?眉間に皺寄ってますよ?」

     「うるさいな、君のせいだよ」

     「紅茶でも入れましょうか?」

     「(聞けよ)紅茶はいいから、さっさと帰ってくれない?」



     雲雀さん酷い!とか言いながら、勝手に紅茶を入れに行く、アイツ。
     ああもう、紅茶なんてどうでもいいんだよ。さっさとどっか行って。


     何でこんなにイライラするんだろう。




     「雲雀さん、入れましたよー、アールグレイ」

     「あっそ」



     咬み殺せば、このイライラは無くなるのかな 。




     「ねぇ、綱吉」


     「!雲雀さん!やっと呼んでくれる気に――」


        バキッ


                 ガシャンッ




     紅茶の入ったティーカップが、床に落ちて割れた。
     僕が殴ったからだ。

     何をって?


     ティーカップを持った、沢田綱吉を。
     沢田はソファの近くに倒れこんでいる。




     「て・・・雲雀さん?」


     「君さ、消えてよ」



     きっと、君のせいだ。



     「どうしたんですか、急に」


     「君がいると、イライラするんだよね」



     だから消えて、と言いながら僕はアイツにトンファーを向ける。
     でもアイツは怯えたりしない。



     「痛いのは嫌ですよ」

     「じゃあ今すぐ此処から出てけ」

     「それも嫌です」



     ああ、なんて我侭なヤツなんだろう、コイツは。
     痛いのが嫌だって言うくせに、何で出て行かないのさ。



     「俺は、雲雀さんと一緒にいたいです」


     「・・・何で」



     何で僕なんかに構うの?
     やめてよ。僕に構わないで。
     いつも一緒にいる二人と群れてればいいじゃないか。

     なのに、何で?




     「だって俺、雲雀さんが好きだから」



     何で笑ってそんなことを言うの?
     何で僕を惑わせるの?




     「・・・ッ、冗談、止めてくれない?」


     「冗談なんかじゃ、ないです」



     ねえ、その笑顔やめてよ。
     すごくイライラするよ、ソレ。

     いつもの笑顔の、何倍も。




     「・・・・今日は、帰りますよ。でも、」


     立ち上がりながら、沢田は僕に言う。



     「俺が雲雀さんのこと好きな気持ちは、嘘じゃないから」


     それは覚えておいて下さい、って。それだけ言ってアイツ応接室から出て行った。




     「・・・好き?アイツが、沢田綱吉が、・・・僕を?」


     何だ、好きって。いや意味は分かるけど。
     でも何で僕なんだ。よりによって。
     何より、どっちも男じゃないか。

     いつもの僕なら「ふざけてる」って、それだけで済ませるはずなのに。


     ねえ、何故だろう。


     それだけで、済ませられない。



     (何か、痛い)




     何処が痛いのか、よく分からないけど。





     
その痛みは、愛ですか?




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   シリアスっぽいのを書こうとして失敗して中途半端になった!
   ツナも雲雀も偽者だ!!


   07.11.12