最初、何に惹かれたのか。
実はよく覚えていなかったりするんだ。
ただ、まあ今で言えばの話だけど。
彼の瞳に惹かれたんだろう・・・と。
いつもは死んだ魚の様な目をしているくせに、
偶に・・・本当にすごく偶にだけど、人目を引く瞳をする。
楽しそうで嬉しそうで、強くて。
でも辛そうな、悲しそうな・・・・・
そして優しい、瞳。
そんな、いつもの態度と不釣合いな瞳に、惹かれたんだと。
「・・・ねぇ、旦那」
「んー?どしたー総悟」
「・・・・・・どっか、行きやせんかィ?」
「・・・なーんだ。愛の告白でもしてくれるのかと思ったのに」
「・・・なんでィ、告白て」
「だって俺、一度も総悟に 好き って言われたことないし」
恋人なのにー、って喚く旦那を余所目に、俺は少し考えてた。
・・・・・あれ?好き・・・・・・好きって言ったこと・・・
「ありやせんでしたかねェ?」
「無いよ!一回も!!告白だって俺からだし、返事は『いいでさァ』だけだったし!!」
「へー」
「へーって・・・・・・」
あ、拗ねた。珍しい・・・。
そんなに言って欲しいのか。好きって。
言ったこと・・・・無かったかねェ。
・・・・・・・・・あーうん、無いかも。
「じゃあ旦那、好きでさァ」
「じゃあって、何か適当すぎない!?」
「そんなこと無いでさァ。
大体俺が、好きでもない人・・・しかも男と付き合うような人間じゃないって、知ってるでしょ旦那」
「え、や、まあ・・・うん。そだね」
好きでもない人のところに毎日居つくほど、警戒心が無いわけじゃない。
ていうか、好きでもない奴のとこに毎日行ったりなんてしない。
・・・調子に乗るから言わないけど。
「で、旦那ァ。出かけやしょうぜ」
「出かけるって、何処に?」
「うーん・・・・海とか?」
「・・・なんか総悟って、適当だよね」
「適当でいいんでィ。要は旦那と行きさえすれば、何処でも」
「・・・何か嬉しいこと言ってくれるじゃん。 それに、」
「?」
「今、敬語じゃなかったよね?」
「 あ 」
別に俺は敬語でも敬語じゃなくてもどっちでも気にしてないんだけど。
まあ旦那にとっては嬉しいことだったらしい。何か急に上機嫌だ。
「じゃあ出かけましょうか総悟くん♪」
「・・・なんかキモ・・・・・・」
「ちょっとォォ!酷いよ!!」
「あはははは」
瞳が好きだ。
いつでも自分を見ていてくれるから。
自分を映していてくれるから。
他人には見せない、特別な瞳で。
いつまでも、この瞳を見ていられたら。
瞳を追って何処までも。
071002